東京・目黒川。両岸に800本を超えるソメイヨシノが4qほど続く桜の名所です。秋山庄太郎氏は少年時代、目黒川近くに住んでいましたから、この桜に親しんでいたかもしれません。2020年春、緊急事態宣言が出される少し前、テレビのニュースで満開の目黒川の様子が映し出されました。ウイルス対策の警備の方が桜見物に訪れた人たちを次々に前に進むよう誘導。一眼レフカメラを構えた写真愛好家らしい方々も、シャッターを押す暇なく、川の流れのように動かされていきました。この春、花撮影地のなかには撮りにくかったり「立ち入り禁止」になった所は少なくなかったと思います。

 私ども本コンテスト実行委員会に「花写真を撮りに行かれないのだけれど、コンテストはやるのですか?」というお尋ねが多くありました。各地の写真コンテスト、なかでも撮影地限定のコンテストでは中止や延期されたところもあります。本コンテストでは撮影地の特定はありませんし、「やりましょう!」ということになりました。但し、これまでの応募作品の傾向から次のようなことが懸念されました。それは、花の名所で撮ったと思われる作品や、撮影会などで撮ったと思われる作品が少なくなかったことです。

 新型コロナウイルスの状況下、これまで主流の撮影スタイルに固執せず、「身近にたのしむ花の撮影スタイル」を応募予定の方々や花写真愛好家の皆さんに向けて、ご提案ができないか…ということから生まれたのが、この「ヒント集」です。

 本コンテスト受賞者の方から、「頑張ります!」との声をよくうかがってきたのですが、これからの撮影スタイルのコンセプトは「たのしみます!」でいかがでしょうか。

 秋山庄太郎氏が健在でしたら、アトリエ周辺の散歩で見かけた草花を撮ったり、なじみの花屋さんで買った花をモデルにスタジオでの撮影に熱中したりしているような気がします。

 皆さまにとって、すてきな花撮影になりますように!

           秋山庄太郎「花」写真コンテスト
            審査委員会 代表委員 丹地 敏明(写真家)
            実行委員会 代表委員 佐藤 卓 (カメラのキタムラ)
            実行委員会 代表委員 上野 正人(秋山庄太郎写真芸術館)