植物を室内で撮る理由は、花屋さんで気に入った状態の花が手に入ることや気候の影響を受けにくいこと、アングルを自由に設定できるなど、さまざまなメリットがあります。
 撮影では対象を中心に据えるのではなく、余白(空間)を意識しながら構図を決めていくことにしています。余白があることで物語や詩が生まれると思っているからです。ライティングはシンプルに窓からの自然光か、LEDライト1灯、レフ板は使わないのでシャドー部が自然に落ち込みます。花と対話しながら室内撮影を楽しんでください。(文・小林健三)






 しっかり咲いている花も良いのですが、蕾だけの場合もどのように花をつけるのか、咲く過程を撮ったり、ちょっと楽しくなる素材です。撮影では静謐(せいひつ)な空気感を感じられるように、花と背景や空間の関係を意識しながら構成しています。
 既成の花器のほか、ジャムやお酒の空き瓶など捨てずに取っておいたモノも、よく使います。形や色、大きさの違う空き瓶を並べて花を1本ずつさしても、素敵な被写体が出来上がります。小さな物語を作りながら撮影するのも楽しいですよ。(文・小林健三)






 私は毎日1時間ほど近くの神田川沿いをカメラ片手に散歩します。道端の花もいい被写体です、時々、虫さんも脇役で入ってきたりすることもあります。しかし街中ではどうしても背景がうるさくなりがちです、そこでアングルを、ひとひねりしてみます。青空を背景にしてみたり雲を絡めたり、思いっきり寄ってみたりと、撮り方はいろいろ。コンパクトカメラのマクロ撮影も思いのほか気に入ってます。ディスタンスを気にせず自由に撮れる、お散歩写真を楽しんでください。(文・小林健三)



こばやし・けんぞう
グラフィックデザイナー/1953年福岡県生まれ。専門学校卒業後、広告製作会社のアートディレクターとしてフィルムメーカーの「五つ子ちゃんキャンペーン」などを担当。1982年小林健三デザイン室設立。1998年より(有)ニコリデザインを主宰し現在に至る。2015年まで母校のデザインコース主任講師を務める。2019年に写真展(個展)「still life」を東京・吉祥寺にて開催。1991年「ラハティポスタービエンナーレ」入選、1992・93年「ショーモンポスターフェスティバル」入選、1999年「日本デジタルアートコンテスト」松永真賞受賞。1992年『秋山庄太郎/花の競演 美の饗宴』(福島県大熊町文化センター)、2019年『美しきをより美しく』(千葉県佐倉市立美術館)などの写真展や『写真家秋山庄太郎』(2012年、学研パブリッシング)などの作品集でアートディレクション、秋山庄太郎写真芸術館のロゴ・館内外のデザインを担当。