「机上に花のステージをつくる時は光源一灯である。主光源の位置を太陽のそれと思えばよい。自然光に近い結果が得られる。」(1989年)と語るように、秋山庄太郎は室内で花を撮るときは、上からの照明一灯で撮るのを基本としましたが、ビギナーには屋内に入ってくる自然光で撮ることを推奨しています。

屋外で花を撮るときは、同じ被写体を時間帯を変えて撮影したり、光の当たり方をあえて均一にせず、陰影を演出して撮ったりすることもありました。

「〔撮影時の気象条件は〕僕はどっちでもいい方だよ(笑)花があれば…撮る気になれば朝でも昼間でもいいしね。唯(ただ)、花は原則として太陽の方を向いて咲いているので、昼間は写真が平べったくなってしまうわけね。だから自分一人で撮る時は片手でカメラを操作して、片手は花の上にもって行って影を作ってやる。そうすると白い花に影が出来たり、花びらに濃淡ができて面白いね。手に限らず木でも何でもかまわないけどね。それから、白いパラソルを持っていくといいと思うね。あれで影をつくるといい場合があるし、影からちょっともらすと、どこかがピカッと光ったりするといいね。」(1984年)

上の写真は東京・南青山のアトリエ(現・秋山庄太郎写真芸術館)の前で撮られた作品です。演出を加えたかどうかはわかりませんが、手前の花と奥の花の陰影のコントラストが魅力的な描写です。(文・秋山庄太郎写真芸術館)