秋山庄太郎撮影の花のポジフィルムとライトボックス


「僕のも“千一夜物語”じゃないけど、千一ぐらいの割合だからね、風景なんかは……。使われたものが300枚に対して30万枚撮ってるし、おそらく伸したものは、その何倍かになるね。そのなかから削り捨てるみたいなことがあるけど、それでも、なおかつまだ気に入らないところがあるからね。いつも言うことだが、撮ったものが皆無駄に見えて、少ない数しか選べない時が、上達している時だと言えるね。これもいいかな、これもいいかなと言って、三割打者なんかやったら、その人はたいしたことないね。」(1984年)

秋山庄太郎は1994年、自身が撮影した花の写真約50万枚のうち、作品として発表したものが2000枚程度と推計しています。割合にすると実に250分の1。上の引用で語られている風景写真に至っては1000分の1と、さらにシビアなセレクトが行われています。

このように、写真作品を生み出す上では「撮る」だけでなく「セレクトする」ことがとても重要です。秋山庄太郎は、ポジフィルムを見るためのライトボックスとルーペ、そしてフィルムマウントにセレクト印をつけるダーマトグラフ(クレヨンのような芯の筆記具)を用いて、フィルムのセレクトに勤(いそ)しんでいました。
その際には、個展や写真集などでの発表を想定して、写真を一定のグループに分類したり、カテゴリーやシナリオを考えながら並べたりといったことも常日頃から行なっています。こうしたセレクト作業は、次の撮影の課題や目標を見極めるための大切なプロセスでもあったといえるでしょう。(文・秋山庄太郎写真芸術館)



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