この世界に無限にある「花」は、気軽に撮影できる素晴らしい被写体です。その「花」を、愛でながら楽しんで撮った作品を公募しているのが、秋山庄太郎「花」写真コンテスト(「花コン」)です。

 この「ヒント集」では、私と一緒に花コンの審査をしている、鹿島千香子さん、小林健三さん、坂井田富三さん、舘弘美さん、中村由利子さんが、それぞれ心を込めた花撮影の極意や思いをご披露くださっています。みなさん、どうぞこの企画を参考にして、もっともっと花の撮影を楽しんでください。

 花コン創始者の秋山庄太郎先生は、もちろん大の花好きでした。秋山先生は、この「ヒント集」でもご紹介している「秋山流写真生け花」作品をスタジオで確立されていますが、普段の街歩きの時にも花を見つけては撮っておられました。「美しい花をより美しく」、とお考えになりながらの撮影散歩を本当に楽しんでおられました。

 「散歩」といえば、「秋山庄太郎写真芸術協会」「カメラのキタムラ」有志のみなさんが中心になり、プロ・アマ不問、参加自由、とても楽しい雰囲気の「カメラ散歩」(ワークショップの記録をご覧ください)という、秋山先生の花の撮影地を訪れて写真を撮る月1回の催しがありました(2020年9月現在休止中)。新宿御苑の「散歩」の時は、私の住まいのすぐ近くということもあり、都合がつけば苑内の案内役を兼ねて加わりました。現在のコロナ禍では「密」になるから避けなければならなくなりましたが、当時は撮影や昼食をとりながら、みなさんと賑やかに写真談義を交わしたものです。そのなかで、ビギナーの花写真愛好家と思しき方によくお話したことをちょっとここでお伝えしておきましょう。

 新宿御苑は都心でありながら自然ゆたかなところで、さまざまな虫、いろいろな種類の鳥もいますから、花と一緒にそれらの生き物を写すこともあるでしょう。花コンの審査でも、虫や鳥が写っている応募作品をよく見かけますが、花コンのテーマは「花」ですから、主役は花、虫や鳥は脇役になっているかどうかということがあります。
 室内写真の場合も、撮影者の設定によっては、花器、小物、家具、人物、ペットなども写す場合があるかもしれませんが、主役は花であり、それ以外は脇役、引き立て役であることを忘れないようにしたいものです。
 「ご近所散歩」や「屋内」での撮影では、花以外の要素も写ることが多くなるようにも思いますので、そんなことにも気を配られたらと思います。

 私も、そのときそのときに感じた花に気軽にカメラを向け、「もうこれ以上撮れない」と思うまで撮影を楽しんでいます。 みなさんも「ヒント集」を参考に「あなたならではの花写真」を撮ってぜひご応募ください。審査委員一同楽しみにお待ちしております。

「花」写真NEW撮影スタイル*ヒント集 監修― ー
秋山庄太郎「花」写真コンテスト審査委員会代表委員
写真家 丹地敏明



たんじ・としあき
写真家/1936年広島県福山市生まれ。出版社写真部勤務を経てフリーランス。国内外の自然風景を中心に、生活・民芸・工芸など撮影対象は多岐にわたる。写真塾「フォトパラダイスアカデミー」主宰。カメラメーカー主催撮影指導会など、写真愛好家育成に秋山庄太郎らと数多く携わる。カメラのキタムラ、NPO法人フォトカルチャー倶楽部、秋山庄太郎写真芸術館などの活動を長年にわたり支援。著作に丹地敏明写真集『沖縄』(主婦と生活社)、『美しい日本の旅』(学習研究社)、『美しい日本・四季の名景』(日本写真企画)など多数。日本写真家協会(JPS)、日本写真協会(PSJ)会員、日本風景写真協会名誉会員。秋山庄太郎「花」写真コンテスト審査委員会代表委員をつとめる。